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26.鎖樋はどのような場所への設置がそのメリットを活かせるのか?

鎖樋は通常の竪樋と比較して、デザイン性の高い製品です。天から降ってきた雨を、電気などのエネルギーの消費も無く、その水の流れをデザインとして楽しめる他には無い製品です。鎖樋は四方を海に囲まれた降水量の多い国、日本で初めて作られた製品で、その気候的な特徴を背景に、独特の建築様式や文化から鎖樋は生み出されました。

 

鎖樋には通常の竪樋には無いメリットがありますが、同時にデメリットもあります。

まずはメリットについて説明します。

 

1.鎖樋のメリット

 

・水が流れる様子を楽しめる

 

鎖樋の特徴はこれに尽きます。やはり雨水が流れる様子が見えることが最大の特徴です。

人はなぜか滝や川の流れ、噴水などの水の動きをしばらく見つめてしまう生き物だと思いますが、それは水の音や流れが癒しに繋がっているからなのかも知れません。

筆者自身も鎖樋を家に使用するユーザーですが、雨が降る日はぼーっと眺めてしまうことも少なくありません。

その時の雨量も鎖樋に流れる水の勢いで何となく強弱を家の中から推測することもできます。

 

・軒が深い所で地面に流すまでの経路が複雑にならず、よりシンプルに水を地面へ導くことができる

 

昔から木造建築が主体で雨が多い日本において、寺院や神社やお城などの重要な建築物では特に軒を深くすることで雨に濡れる機会を少なくし、水分から発生する建物の劣化を防いでいました。

ただし、軒を深くすると軒樋が建物の外壁から離れてしまうことで、通常は建物に沿わせて設置する竪樋までの経路が複雑になり、見た目も悪くなってしまいます。その時、シンプルに真下に雨水を軒樋から落とせる鎖樋はその特徴を大きく活かすことができるのです。

 

・日本的な雰囲気を演出することができる

 

状況によって良し悪しはありますが、あの日本的な雰囲気を滲み出すように演出できる建材は鎖樋を除いてあまり無いと思っています。いつも水が流れているわけでもなく、その時の天候によって水が止まったり流れたりすることで姿も変化し、また風に少しそよぐ風情は金属で作られたものなのに、少し有機的でもあります。その特徴もあって、近年では日本を訪問する外国のお客様が宿泊されるホテルでの採用事例も増えています。これは日本を楽しんでください、という建築設計される方の意図だと捉えています。

 

なお、私たちの作る鎖樋の中には純粋に水の流れをデザインとする、という考え方で作っているシンプルな形状の鎖樋もあり、それらの鎖樋は私たちが考える日本的な雰囲気は少なくなっています。

 

以上がメリットとして考えられる内容ですが、デメリットも合わせて説明します。

 

2.鎖樋のデメリット

 

・通常の竪樋と比較して排水能力が少ない

 

連なった鎖で1つずつ徐々に水を集めて下に流すという鎖樋の形式上、大量の水を一気に地面まで流すのは不得意です。大量の水を流さなければいけない場合にはパイプ製の竪樋を併設させるか、一時的に急激に雨が降った場合を想定して、別の箇所から緊急的に排出経路の設置が必要となります。

 

・雨水の量や風の強さによっては周囲に水が飛び散る場合がある

 

鎖の連結部分、水の流れが見える個所から状況によって水が飛び散る場合があります。風が強い日や、雨水が大量に流入する場合に飛散する量が増えます。そのため飛散してもあまり問題がない場所での設置をおすすめしています。雨水が飛散する距離は雨の強さや風の強さにも影響を受けますが、おおよそ半径0.5m程度です。

 

・通常の竪樋と比較して費用は高くなる

 

いろんなパーツがたくさん組み合わされた鎖樋と比較して、パイプ製の竪樋はパイプが一本地面に向かって伸びる形になるので部品数も少なく、設置費用は鎖樋の方が高くなります。

 

・掃除などのメンテナンス頻度は高くなる

 

雨水が通る口がパイプ竪樋と比較して小さいため(当社製のものは直径が約20mmから35mm程度)、落ち葉などのゴミは溜まりやすく掃除などの頻度は上がる傾向があります。

大量の落ち葉などが集まる場所への設置はメンテナンス頻度が高まり控えたほうが良さそうです。

 

以上のメリット、デメリットを総合的に踏まえて、設置に適している状況や場所はこのようにまとめられます。

 

3.まとめ

 

1.見せる雨樋の特徴を活かすため、鎖樋が良く見える場所、雨水が流れる様子が見える所への設置が望ましい。

 

2.竪樋の取り回しが複雑になる箇所や難しい場所で鎖樋は使いやすい。

 

3.パイプほどの排水能力は必要が無いが、多少の雨水が流れる場所、雨水の集まる量が少ない場所、また、落ち葉などが溜まりにくい場所。

 

以上、鎖樋のメリットとデメリットを含めてご説明しました。鎖樋は特徴のある雨樋ですので、設置に適している場所、あまり適さない場所があります。特に適しているところは、上に挙げた状況の場所となりますので、鎖樋の設置検討時の参考情報としてください。