25.こんな時どうする?鎖樋の排水能力を超える場合の納め方について
鎖樋は排水能力が通常の竪樋に比べて少なく、まれに降るような強い雨を想定した場合には全然処理能力が足りなくて困る、というご相談を頂くことが少なくありません。
その時にどのような方法で対処したのか、過去の事例を交えてご紹介したいと思います。
1.鎖樋を設置した状況
今回ご紹介するのは、
・新築工場(オフィス併設)
・VP管から、鎖樋を吊り下げて排水
という状況です。
工場の周囲には横樋から竪樋にルーフドレンを使ってねじ込み式のVP菅が接続されており、その末端部に意匠上、鎖樋が活用された形です。完成前に見学に伺いましたが、工場とは思えないとても素敵な建物でした。
鎖樋の設置のイメージはこちらの図の通りです。VP管に金具を直結せず、空間を開けて水を受けることで、鎖樋が排水しきれない場合でも、とにかく水を建物から地面に流すことができるような形となっています。
2.VP管に伝わる水の流れ方
縦に設置された排水管を流れる水は、通常その内壁面を伝って落ちてくるため、何もせず、そのまま鎖樋を設置しても鎖樋には水が伝って流れることはありません。
鎖樋を設置し、VP管から降りてくる排水に対してきちんと鎖樋に水を流すためには、まずは管の中央に集めて鎖樋に流す必要があります。
3.VP管と鎖樋を繋ぐための専用の金具について
瀬尾製作所では「排水管接続金具」と呼ぶ金具があり、VP管の末端に取り付けることで水を絞って排水することができて、鎖樋も取付が可能となるような金具を用意してありますが、VP管が持つ排水能力を少なくすることになり、結果的に排水能力が足りなくなることがありました。
そのような場合、当社にて排水管接続金具をカスタマイズしてVP管に直結せず、図面のように少し離して水の受け口を作ることで、大量の水が流れる時には鎖樋の上部で溢れさせることでVP管の排水能力を確保しました。
このような方法で対応した建築はこちらの物件以外にも現時点で数か所あり、今のところ問題は特に聞いておりません。
4.紹介した取り付け方の課題まとめ
ただし、この取り付け方にはいくつか課題があります。
・溢れた水の排水は問題にならないのか
大雨の時とはいえ、かなりの量の水が溢れて鎖樋の直下や周囲に飛び散ることになるので、それが問題にならないのか検討する必要があります。
・VP管の直下に排水管接続金具を付けることができるのか
建築物の側面に金具を取り付け、そちらに鎖樋を吊ることになるため、あまり建築物から距離が離れた箇所には荷重の問題で取付が難しくなります。また、その建築物にあわせた金具を特注で作り、取り付ける必要があるので、多少のコストアップが考えられます。
以上、VP管に繋ぐ鎖樋の排水能力を補う方法になりますが、上記のような課題が考えられますので、状況に合わせてこの方法を使えるのか、慎重に検討する必要があります。