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38. 【ユーザーインタビュー】Modern Zen Gardenが描く日米融合のデザイン

アメリカ西海岸の気候や風土に、日本の伝統的な美意識を融合させたユニークな庭園を手がけるModern Zen Garden。代表の大渡浩平(おおわたりこうへい)さんは、渡米から40年以上にわたり、現地の気候や素材を深く理解し、そこに日本の「禅」の精神を吹き込むことで、多くの人々を魅了してきました。

その自然を愛する心と、日本の「引き算の美学」が、どのように庭づくりに反映されているのか。そして、当社製品である「鎖樋」が、彼の創造性とどう共鳴しているのかを、詳しく伺いました。

 

大渡 浩平(おおわたり こうへい)

 

Modern Zen Garden 代表、ガーデンデザイナー。 1956年生まれ。東京農業大学農学部を卒業後、日本庭園の施工・管理を行う造園会社で2年間修行を積む。 1981年に渡米。カリフォルニア州を拠点に、現地の造園会社で経験を重ねた後、独立。 1990年代後半より自身のウェブサイトで作品を発表し、のちに「Modern Zen Garden」を米国で設立。「モダンでありながらオーガニック」を信条に、日本の伝統的な美意識と西海岸の気候・風土を融合させた独自の庭園デザインを展開。水と石を軸とした、静と動のコントラストが織りなす空間は、アメリカ西海岸でも高い評価を得ている。

 

 

デザインの核は「モダンでありながらオーガニック」

 

——本日はありがとうございます。まずは、大渡さんのこれまでのご経歴と、デザイン哲学の原点についてお聞かせいただけますか?

 

大渡さん:よろしくお願いします。私は1981年に渡米しました。東京農業大学を卒業後、日本庭園の会社で2年ほど修行し、アメリカに渡りました。まずは庭師の仕事から始め、現地の造園会社で経験を積みました。

私のデザインのキーワードは、「モダンでありながらオーガニックであること」。そして、水と石を軸に据え、静と動、光と影、硬さと柔らかさといったコントラストを大切にしています。日本の伝統を基盤にしつつ、現地の素材や気候に合わせて再解釈することで、アメリカで独自の表現を追求してきました。

 

鎖樋との出会いと、「ZEN RAIN CHAIN」の誕生

 

——鎖樋をデザインに取り入れようと思われたきっかけは、どのようなことだったのでしょうか?

 

大渡さん:最初のきっかけは、あるお客様から「こういうものがあるんだけど」と、瀬尾製作所のウェブサイトを紹介されたことでした。そのモダンなスタイルを見た瞬間に「これはいける」と直感しましたね。そしてその後、依頼されたその庭に鎖樋を取り入れたのが始まりです。それが全てのきっかけでした。

 

 

——特に雨の少ない南カリフォルニアで、鎖樋はどのように受け入れられていますか?

 

大渡さん:そこが重要なポイントです。この地域では雨が少ないため、雨樋としての機能だけでなく、ポンプで水を循環させることで一年中水の流れを楽しめるアートピースとして鎖樋を提案しています。これを私は「ZEN RAIN CHAIN」と呼んでいます。

Modern Zen Gardenという名前の通り、「禅」の思想をこのレインチェーンのあり方に込めているのです。雨が降らないからこそ、水の「気配」を作り出し、静かな時間の層を加える。乾燥した土地で暮らす人々は、水への憧れが強いんです。雨が降れば傘もささずに歩くほどですからね。鎖樋は、そんな彼らの心に潤いを与えてくれる存在なのです。

 

 

デザインの決め手は「音」。五感で感じる庭づくり

 

 

——鎖樋をデザインに取り入れる中で、最も大切にされていることは何ですか?

 

大渡さん「音」です。音は、庭における非常に重要なデザイン要素だと考えています。噴水のような「バシャバシャ」という音ではなく、鎖樋を水が静かに流れ落ちる「サラサラ」という音。雨が降っていなくてもその音が聞こえることで、空間に静謐さと心地よいリズムが生まれます。SEO RAIN CHAINの鎖樋は音も素晴らしいのです。

室内で鎖樋を使ったプロジェクトでは、水の音が空間に響きすぎないか心配される方もいましたが、実際にはその静かな音色が大変喜ばれました。水の量を調節できるフローコントロールも付けているので、その日の気分に合わせて音の表情を変えることもできます。

鳥や蜂が水を飲みに集まってくることもあり、庭に「動」の要素、つまり生命感をもたらしてくれます。こうした自然とのつながりも、ZEN RAIN CHAINの大きな魅力ですね。

 

日本の美意識「わびさび」を世界へ

 

——クライアントに鎖樋を提案される際、その背景にある文化についてはどのように説明されていますか?

 

大渡さん:初めて見る方は、まずその美しさに惹かれます。それが日本の「わびさび」の感性から生まれたものだと説明すると、皆さん深く納得されますね。派手さはないけれど、心に響くものがある。その繊細な美意識が、モダンな建築とも不思議と調和するのです。

また、鎖樋が手前にあることで庭に遠近感が生まれ、空間に立体的な広がりを与えてくれます。人々が必ず目を留める、強力なフォーカルポイントになりますね。

 

 

——これから鎖樋を取り入れたい方へ、アドバイスをお願いします。

 

大渡さん:アメリカでは「カーブアピール(Curb appeal)」という言葉があるように、道行く人に見せることを意識する文化があります。玄関先など、一番人目につく場所に設置すると、家の表情がぐっと豊かになります。受け皿に自然石を使うなど、少し工夫するだけで、より趣のある空間を演出できますよ。

 

自然への敬意を形に。これからの庭づくり

 

——大渡さんが考える「禅」とは何でしょうか?

 

大渡さん:何もない静かな空間の中に、ポツンと置かれた要素に感動すること。毎日変わりなく存在する自然の姿に、心を寄せること。それが私にとっての「禅」です。これからも、見る人の心に静かに響くような、そんな庭をつくり続けていきたいと思います。

 

——最後に、大渡さんが今後目指していきたいお庭のビジョンについてお聞かせください。

 

大渡さん:今後は住宅だけでなく、人々が集う公共の空間にも、静かな余白をもたらす庭づくりに取り組んでいきたいです。最近では、ステンレスのパイプから水を流すのではなく、自然の石を彫り、そこから直接鎖樋に水が滴り落ちるような、よりオーガニックなデザインを構想しています。やはり、自然のものが一番美しいですから。

 

Modern Zen Garden

 

対談を終えて

 

今回の対談から見えてきたのは、鎖樋が持つ「機能」を超えた大きな可能性です。大渡さんの手にかかれば、鎖樋は庭の主役となり、静寂を奏でる楽器となり、そして暮らしに潤いをもたらします。 もしあなたがご自身の住まいに、何か一つ「心を満たす要素」を加えたいと考えているなら、窓の外に一本の鎖樋を設けてみてはいかがでしょうか。きっとそれは、雨の日も晴れの日も、あなたの日常にささやかな感動を与え続けてくれるはずです。 Modern Zen Gardenの今後のプロジェクト、そして鎖樋がアメリカでの暮らしにどのように溶け込んでいくのか、これからも注目していきたいと思います。