鎖樋から広がる、
外装の新しいかたち

鎖樋は、雨水を導くという本来の役割を超えて、建築の外装として活用される場面が増えてきました。
繊細な造形や自然との調和性を活かし、高層階の緑化計画の一部として採用されるなど、用途の広がりを見せています。
そうした中で、鎖樋の構造や取り付け技術を応用し、他分野の専門家と協働しながら、新たなファサードを実現するプロジェクトも生まれました。本ページでは、そうした実例のひとつとして、鎖樋の技術を生かして生まれた外装製品をご紹介します。

SEO RAIN CHAINの
ファサードの特徴

瀬尾製作所では、長年にわたり屋外で「吊る」「繋ぐ」構造に取り組んできました。
その中で培われた鎖樋の技術を応用し、軽やかで自由度の高いファサード構法が生まれています。
特にワイヤー仕様の構造では、金属製カップを一つひとつ精度高く連結できるため、部材全体を真っ直ぐ美しく設置することができます。大きな支持材を必要とせず、ワイヤーで構成部材を支持するため、建築外観をやわらかく整えることが可能です。
また、モジュール単位での施工が可能なため、軽量で施工性にも優れており、現場ごとの調整にも柔軟に対応します。
風や光を受けとめながら、建物の表情をそっと整えるこの構法は、植物との相性も良く、緑化計画や外構デザインにも取り入れやすくなっています。
鎖樋で培った連結技術と金属加工技術をもとに、外装設計の新たな可能性を広げていきます。

変化するファサードの役割と
鎖樋から広がる新しい可能性

近年、ファサードは単なる建物の「顔」を超えて、採光・通風・日射遮蔽・脱炭素など、環境に配慮した機能を担う要素として再評価されています。
さらに、建築全体のデザインを左右する要素として、軽やかで柔軟な構造への関心も高まっています。
瀬尾製作所にも、「鎖樋をファサードに使えるか?」「外装に吊る構造を応用できないか?」といったご相談が年々増加。
雨水を導く装置であった鎖樋の構造や素材の知見が、今では外装全体の構成へと広がりを見せています。
私たちは、鎖樋づくりの中で培った「吊る・繋ぐ」という屋外構造の技術を活かし、ワイヤー構法をベースにした新たなファサード製品のかたちを開発してきました。

鎖樋を用いた
施工事例のご紹介

コープ共済プラザ

  • 所在地:東京都渋谷区千駄ヶ谷
  • 設計者:株式会社日建設計
  • 施工:㈱フジタ

東京都渋谷区千駄ヶ谷に位置するコープ共済プラザは、2011年3月11日の東日本大震災の教訓から生まれた都市型サスティナブル建築です。震災時、東京でも多くの建物で天井が落下し、窓が開かないオフィスが社会問題化したことを受け、快適性、環境性、そして事業継続性を高めることを目指して設計されました。
建物の外観を覆うのは、鎖樋やチェーンに登攀性のつる植物が伝わる「ファサード」です。一部は潅水装置にもなっており、葉面への潅水によって植物を暑さから守ると同時に、蒸散冷却効果を生み出します。オフィス空間には窓辺を通路とするレイアウトにより緑や花による癒しを与えるだけでなく、外付けブラインドとしての日射遮蔽効果もあります。ファサードは自然の風や光、花の香りを感じられる、知的生産性の高い居心地の良いオフィス空間を創り出しています。

淺沼組 名古屋支店

  • 所在地:愛知県名古屋市中村区
  • 設計:㈱川島範久建築設計事務所
  • 施工:㈱淺沼組

淺沼組が「人間にも地球にもよい循環」を目指して推進する『GOOD CYCLE BUILDING』。その第一弾として、築30年の自社ビルをリニューアルしたのが、この淺沼組名古屋支店です。本プロジェクトは、都市における新たなマテリアルフローの要として建築を再構築し、人にも地球にもよい循環の中に建築そのものを位置付け直すという新たな試みです。
正面には既存のガラスファサードから一新され、樹齢130年の吉野杉の丸太を大胆に用いたファサードが設えられています。この杉はあえて未乾燥のまま取り付けられており、将来的に家具などへ転用することも想定し、「循環」をテーマとしたデザインとなっています。鎖樋はファサードの一部として植栽への潅水を担っています。

立教大学 新座キャンパス9号館

  • 所在地:埼玉県新座市
  • 設計:㈱日建設計
  • 施工:松井建設㈱

立教学院創立150周年記念事業の一環として建設された「立教大学 新座キャンパス9号館」。この建物は、2023年4月に開設されたスポーツウエルネス学部の教育・研究活動に対応する施設環境を整備する目的で新設されました。2025年4月からの利用開始が予定されており、新たなイノベーションの創出拠点としての役割を担います。
環境性能も高く、省エネルギー建築の指標である「ZEB Ready」認証を取得。これは、地下水で壁を冷やす「井水パネル」や、地中の熱で空気を予冷・予熱する「クールヒートトレンチ」といった、自然エネルギーを巧みに利用する技術によって実現されています。ベランダ側には、つる性植物への登はん用の支持材とともにファサードとして、約190本の鎖樋の波紋が採用されました。

「吊る」を活かして、
外装はもっと自由に。

2022年、東京都千代田区・神田神保町の建築において実装された「Envi-lope01」は、鎖樋の製作を通じて培ってきた「屋外で吊る・繋ぐ」構造の知見を活かして開発されたファサードです。
ワイヤーで部材を吊り下げる構成によって、外装面を軽やかに立ち上げながら、支持点の位置や部材の密度を柔軟に調整できるため、建築に合わせた自由な表現が可能となっています。瀬尾製作所は、このファサードの開発において、製作技術の応用と構成の検討に携わりました。吊るという構成がもたらす自由度と軽快さを活かしたファサード事例の一つです。※本製品は㈱日建設計との共同開発です

神保町SFI

  • 所在地:東京都千代田区神田
  • 設計:㈱日建設計
  • 施工:東洋建設

日建設計と瀬尾製作所が共同開発した、都市の脱炭素化を目指す外装システム「Envi-lope01」です。日射を遮りつつ眺望を確保するため、建物の部分ごとに逆算して設計した3種類のお椀状パーツで構成されます。パーツは3㎜のワイヤーで連結・支持され、連続した面を形成します。
生産には板金プレスで0.8㎜の対候性の高いZAM™を加工、素地仕上げとして薄板を使うことで軽量化と製造時のCO₂削減も実現しました。このファサードは、日照抑制によりCO₂削減にも貢献。これまで裏の存在だった屋外避難階段を木漏れ日のような心地よい空間に変え、密集市街地に新しい光と影の風景を創り出します。

ワイヤーを基軸とした構法は、直線的な面構成だけでなく、緩やかな曲面や凹凸のある立体にも柔軟に対応できるのが特長です。
モジュール単位で構成された鎖樋が、形状の変化に追従するように連なり、建築の動きに寄り添います。
固定点の位置や角度を調整することで、従来の外装部材では難しかった表現も実現可能に。鎖樋の軽やかさと柔軟性が、より自由なファサード設計を支えています。

構造や仕組みについて

建物の印象を大きく左右するファサード。
ワイヤー構法と Envi-lope の仕組みは、その表現の幅をさらに広げ、環境と調和する新しい外装のあり方を提案します。
詳細は下記ページよりご覧いただけます。

瀬尾製作所では、鎖樋の製造・販売を主軸としながら、
その構造技術を活かしたファサード製品や外装部材のご相談にも対応しています。
Envi-lope 01をはじめとする、ワイヤーで吊る・繋ぐ構造の外装部材については、製品としての販売も可能です。
図面のご提供や取付方法のご相談、カスタマイズ対応など、設計段階からのご相談も承っております。
鎖樋の構造を応用した外装や、ワイヤー構造を取り入れた建築計画をご検討の際は、ぜひお気軽にご相談ください。